■日本の受験社会の変遷2

高度経済成長期に出現し、その後激しくなっていったと言われる受験戦争ですが、その後はどのように変化をしていったのでしょうか。ここでは受験戦争の現在を見てみることにします。
日本が高度経済成長を遂げ、庶民の生活が豊かになっていくにつれ、受験戦争も激化していきました。単純に考えれば庶民の所得が増え、その分を子供の教育に当てることができるようになっていったからです。数と言う側面から見ると、日本の受験戦争は第2次ベビーブーム世代が受験に挑んだ20世紀80年代末から90年代始めにかけて、そのピークを迎えたとされています。余談になりますが、当時は受験人口の増加に伴って、受験の難易度のアップが盛んに言われました。元々は中堅校に過ぎなかった大学が軒並み難関の仲間入りをしたと言われたものです。関西の4つの私立大学を指す「関関同立」という言葉は今も耳にするでしょうが、他にも「日東駒専」「産近甲龍」「大東亜帝国」等という言葉があったのを思い出す人も少なくないのではないでしょうか。
現在の日本の社会や経済について評論をする際には、人口の少子化や高齢化といった言葉を避けて通ることはできません。日本の社会や経済のあらゆる事象に少子高齢化が密接に絡んでいます。受験もその例外ではなく、少子高齢化の影響を受けています。90年代始めの受験人口のピークを頂点に、現在は受験者数全体が減少を続けており、そのため学校の志願倍率も全体として低下しています。それどころか一部の大学では定員割れが常態化しているほどです。数の面から言えば嘗てあれほど激しかった受験戦争は、現在は確実に沈静化したと言えます。ですがこれによって学歴社会そのものが変化したわけではありません。学歴社会自体は現在も一部で存在し続けており、例えば特定業種の企業の採用試験等では、応募した学生に対して、その出身校によって扱いが大きく異なっているといった現象が残っています。
こうして大学受験は概ね競争倍率が低下し、受験戦争は嘗てほどは激しくなくなったとされています。ですがその一方で、中学受験は依然活発だと言われています。大学の受験戦争が沈静化したにも拘らず、その一方で中学受験で相変わらず激しい競争が展開されていると言うのも一見理解しづらい現象ですが、これは一部都市圏における公立中学への信頼度の低下や、少子化の影響によって子供一人あたりの教育費が増加したこと等が原因だと、専門家は分析しています。その一方で中学受験による親の経済的負担の増加も著しくなっていますが、逆に子供一人当たりの教育費の増大が、親たちが子供を増やすことを躊躇う大きな原因となっており、結局それが少子化に繋がっていると言えます。つまり少子化→教育費の増大→少子化→教育費の増大→少子化…という断ち切りがたい流れが出来上がっているのです。少子化問題の解決に目処をつけたければ、教育の問題にも手をつけなければ根本的な解決にはならないのです。

お金の話が出たので、ここでついでに教育費にも触れておきます。皆さんはエンゼル係数と言う言葉を聞いたことがあると思います。エンゼル係数は家計支出に占める食費の割合を指すもので、一般に生活水準が上がれば上がるほど、エンゲル係数は下がるとされています。そのエンゲル係数になぞらえた、エンジェル指数なるものが存在するのを皆さんはご存知ですか。現在教育費は食費と並び、現代の家庭の家計状況を測る重要な基準となっています。この家計支出に占める教育費の割合をエンジェル指数と呼びます。今の日本ではこのエンジェル指数は相当の数値に上っているものと想像できます。

pickup


広島の新築一戸建て